グランドピアノに乾燥剤は必要か?(調律師アンケート調査)

当サイトにご登録いただいているピアノ調律師さんに「グランドピアノの維持・管理に乾燥剤は必要だとおもうか?」について、アンケート調査をしてみました。

グランドピアノに乾燥剤は必要か

どちらともいえない理由

ピアノ調律さん 談

グランドピアノの場合、譜面台を外してピアノの上に置いて演奏されている場合は、乾燥剤等の効果も期待できるかもしれませんが、通常の方法なら効果は期待できません。


つくしピアノ調律所

つくしピアノ調律所
(埼玉県入間市)
 中嶋さん

基本的にはグランドピアノには乾燥剤は必要ないと思います。

グランドピアノは大屋根を開けたオープンな状態で弾くことが多いため、その場合乾燥剤の効果はほとんどありません。

ただ、音漏れなどの問題があり大屋根を開けることができないピアノでお部屋の湿度が高い場合や、普段はほとんど使わずにカバーを掛けられているピアノなどで、お客様からご要望があれば入れさせて頂いています。(それでもまずは、たまにでも大屋根を開けて空気を入れ替えて頂くことをお勧めしておりますが……。)

アップライトピアノほどの費用対効果はありませんが、少しでも良い状態にするためにできることは全てしたい、という理由で入れるのはありだと思います。


立川ピアノ調律技研

立川ピアノ調律技研
(神奈川県藤沢市本鵠沼)
 立川さん

屋根を閉めたままなら有効。あけたピアノには無効。

我が家のピアノ188㎝に乾燥剤5ヶ屋根は閉めたまま。UPと同じ条件です。調律時にグラム数を計測して袋に記入しておきます。

    450gの乾燥剤を使用(*調律時の記録より
    ピアノ内部の乾燥剤室内(机に置いてある乾燥剤
    6月 502g6月 514g
    1月 485g1月 484g

お気づきの様に湿度の多い季節には5ヶの乾燥剤が分担しあっているようです。また湿度の低い時期は放出していることがわかります。
多少の隙間があっても有効の様です。(UPにも)

シリカゲルを天日干し? せっかく吸った湿気は冬までとっておきましょう。

私は3年間は使います毎年1個ずつ増やしながら適量になったら古い順に交換します。

机の上の乾燥剤の統計です。

    2月が一番低く482g
    6~7月梅雨頃 530g
    4・10月 490~500g
    平均値 506g 4月末~6月始め 10~11月

調律時計測した数値より±24gで狂いの限界に達します。ピアノの含水量は量ることは困難ですが乾燥剤は便利ですね。

調律半年保証と謳うのは危険!3ヵ月でも狂う季節もありますよ、狂う時期を知る事はユーザーさんに適切なアドバイスもできますし、自分を守ることもできます。

余計なことかと思いましたが参考にして頂けたら幸いです。

因みに私の住まいは神奈川県の湘南です、UPのアンケートを読ませて頂いて乾燥剤が有効の地域と無意味の地域があるようで、私の統計は参考になるのでしょうか?


ピアノ調律さん 談

お客様のお宅によっては乾燥している部屋があります。その場合は乾燥剤は入れません。

すごく湿気のあるお部屋をみかけることがあります。この場合はお入れします。

乾燥剤は入れない場合が多いです。

弦などのサビが心配であれば乾燥剤ではなく防りん剤を入れます。

お客様にはピアノの部屋に湿度計をおかれることをお勧めしています。

乾燥してきたら加湿。湿度があがってきたら除湿をうながしております。

現実、乾燥剤の効能はかなり期間が短いと思っております。ですからお客様自身でお部屋の湿度・温度の調整が最良であるとご説明しております。


グランドピアノでもアップライトピアノでも蓋や天屋根を閉めっぱなしや開けっ放しの条件はさほど関係ないと思います。

ポイントはお部屋の環境。

お客様の中には長年乾燥剤を入れてきたことから急に入れないことは抵抗がある方がおられます。

雰囲気をみて入れるか入れないかの考慮も必要かなと。

楽器店に在籍時代は一件につき乾燥剤2個をいれることに励んでしまったこともありました。これは会社としての販売ノルマからの発露でありました。

また、昭和50年代は、楽器店も技術者も、乾燥剤有無の考察まではいたらなかった時代であったのかなと。

そこへ乾燥剤の卸業者からの商品売り込みで「乾燥剤過大効果アピール」の雰囲気に入っていたようにも思います。

楽器店によっては乾燥剤ノルマの成果が業務評価にもつながって、そのことは楽器店オーナーの目線では業務意欲向上あわせて、付加価値商品の収益向上につながったのは確かであったと思います。


ピアノ調律さん 談

調律の社員だった頃は物販売り上げ"という項目があったので有無を言わさず入れさせ(販売)られました。


ピアノ調律さん 談

どちらともいえない。

というのは、やはり設置場所の条件次第と言うことですが、グランドピアノの場合乾燥剤を入れる場所が無いので、乾燥剤は入れられません。

フレームの上や響板の上に袋入りの乾燥剤を入れているケースを見受けた事が多々有りますが、全く意味が無いどころか、むしろ悪影響だけです。

理由は、グランドピアノは隙間が多く(アップライト以上に)梅雨時など乾燥剤の容量を超えどんどん湿気が隙間から入って来るからですが、袋入りの乾燥剤を入れたままにすると袋に接した部分がシミになったりしますし、響板の上に置くと、云うまでも無く悪影響だけです。

「水取ぞうさん」も入れる場所が有りません、フレームの上に置こうものなら雑音の原因になりますし、隙間が多すぎてアクションまで影響しませんし。

アクションブラケットにダンプチェイサーを装着するという手は有りますが、万能的にアクションの状態が良くなる訳ではないので、グランドピアノの場合は設置された部屋全体の空調を考えて頂くしか無いですね。


ピアノ調律さん 談

まず、現状を把握するために湿度計を中(フレーム上)に置いてもらう。(最近は小型でリーズナブルな温湿度計があります。)

近年は冬場、過乾燥のお宅も多く、梅雨時との格差を知っていただくには有効です。

梅雨時乾燥剤を入れて、湿度計が納得いく値を保てるのであれば使用すればよいでしょう。

ただ、毎回交換する事を考えるとリーズナブルな除湿機を購入し使用する方が価値的だと思います。


乾燥剤は必要だと思う理由

ピアノ調律さん 談

アップライトと同様に必要だと思います。特に、ずっと蓋を閉めたままのピアノには効き目が高いと思います。もちろん、一年や二年で違いが出るというほどシビアではありません。

またアクションの構造上アップライトのように湿気によるスティックは起こりにくいことは確かですが、湿気は徐々に溜まっていき、急に症状が出始めるのでわかりにくいと言えます。

もちろん乾燥剤を入れていれば必ず大丈夫ということはありませんが、入れないよりかは確実に効果はあるはずです。

弦の錆にも有効な防錆剤が一緒に入っているものもありますので、私はそれをお勧めしています。


ピアノ調律さん 談

私はグランドピアノ(アップライトもですが)の乾燥剤は入れていなかったのですが、長年調律をされてなかったピアノの調律依頼で見せて頂き、その時には虫による被害はなかったのですが、次の年にまた行かせて頂くと、虫食いにあっていた事が3度ありました。

長年放置したいたのに大丈夫だったピアノが、私がお伺いしてから虫食いに……?

外気に触れ何らかの形で虫が入ったのか?

それから色々調べて、防虫効果のあるピアノ用乾燥剤を入れるようになりました。

温暖化のせいなのか、昔より虫の被害が多いように思います。

使わない時には屋根を締めて頂き、防虫や防錆効果を高めるよう促しています。

入れさせて頂くようになって5年になりますが、今の所虫食いの被害はおきていないです。

乾燥剤としての効果はあまり期待していないのですが、保護材としての意味合いが強いです。


ピアノ調律さん 談

出来れば除湿器がいいと思いますが、乾燥剤も入っていないより入っていた方が良いと思います。

除湿機と違って急な湿度変化や梅雨時などの高湿度にはそこまでの効果はありませんが、入っているとやはり安定します。


乾燥剤は必要ないと思う理由

ピアノ調律さん 談

鉄骨の上に置くのは得策ではないから。

また、除湿機が本来の役目を果たすと思います。


ピアノ調律さん 談

UP同様に、まったく必要でないと思います。

ピアノは美しい音色を解き放つ、素晴らしい楽器です。そうなんです!ピアノは楽器なんです。

美しい音色!そして素晴らしいまでのフォルムを持った楽器です。

GPのフレームにたくさんの乾燥剤を乗せた状態を見て、皆様方はどう思われます!?

音楽を楽しまれる方、そうでない方etc。私はピアノが可哀そうでなりません。

高音部の綺麗な音はかなりの割合でフレームも振動している事を、皆様ご存じないのでしょうか?

女性ヴァイオリニストで著名なアンネ・ゾフィー ムターさんをご存知でしょうか!

普通、一般的にヴァイオリンを演奏するのに、楽器の裏に肩当器具を使用いたします。するとかなり演奏しやすくなります。

でも、実際の響きは間接的になり、演奏者の想いが少々伝わりにくくもなります。

前述のヴァイオリニストは心から自身の想いや解釈、そして作曲者の意図とするところを確実ににオーディエンスに伝える為、この器具は使いません。

つまり直接的に、または自身も楽器と一体化することで素晴らしい音楽を伝える。

ピアノもそうだし、どんな楽器も一緒です。


ピアノ調律さん 談

密閉していない場所に乾燥剤を入れても効果がないので、部屋全体の湿度管理をするべきだと思います。

ピアノ調律さん 談

これはまったくもって不要だと思います。

アップライトピアノと違って、密閉できる空間はほとんどありません。また仮に置くとしてもかなり限られた場所にしか置くことができません。

グランドの特徴は屋根を開けて鳴っている音を直接聞くことができます。それで音楽の表情を作っていくことができます。

管理のために屋根を閉めきって弾かなければいけないということがあれば本末転倒です。


過去、こういう症状を見たことがあります。

グランドピアノの中に乾燥剤が入っていました。置いてある場所は鉄骨の上です。えぐれているカーブのあたりです。

しかし、なんの原因かその袋が破れていて、中のシリカゲルがいくつか飛び出していました。それがヒッチピンの近くの中音の弦に接触し、錆びてそこから断線していました。

そうです、張弦の依頼だったのです。まさか中音とは思わず、しかも中音の太い弦は普段持ちあわせていません。大変な作業でした。

私の推測では鉄骨の塗料と乾燥剤の中身が化学変化して袋が破れたのだと思いましす。鉄骨の塗料が溶けていたので。(輸入ピアノでした)


また他では、誰が入れたかわかりませんが、乾燥剤が響板の上に置いてありました。

運んできた運送業者か(これはよく見かけます)、家の人か、はたまた前任の調律師か。その乾燥剤の下の響板の塗料が溶けて、跡が付いてしまっていました。

もちろん響板の響きも妨げてしまいます。

ピアノを置いているお部屋の環境を整える、というアドバイスをさせていただいています。調律師の責任とも思っています。

まず湿度計、そして除湿機、エアコンのドライの使用。木の楽器は最低そういう管理意識が無くては良い状態を維持出来ません。


ピアノ調律さん 談

アップライトピアノは縦型のため部屋の隅(壁際)に置かれることが多く、箱としての密閉性を期待して、乾燥剤や除湿機がそれなりの効果を出せるかもしれません。

しかし、グランドピアノは壁や床から本体が離れており、ほとんど開放的といえるため、本体を除湿したいなら、周辺環境の湿度から下げなければならない。

つまり、エアコン等による部屋そのものの内部の除湿(換気)か、または本体にオールカバーをかけて内部(本体の響鳴板下の空間)に除湿機を設置するか。

または、ダンプチェイサーを2本使用して、絶えず通電しておくか。

乾燥剤はほとんど効果が得られないと思う。


ピアノ調律さん 談

グランドの場合はアップよりも増して必要ないと思います。

通常鉄骨の上に置くので、アクション部より離れている。

今までみてきたピアノの中で効果があった例をみたことがありません。


ピアノ調律さん 談

前回、アップライトについて述べたこととまったく同じ理由で必要ない。無駄です。

感想剤の効果について科学的なデータでもない限り説得力もない。

乾燥を防ぐためにコップに水を入れてピアノの中に入れる方もいらっしゃるようですが、それも無駄なこと。

乾燥剤を2つ入れると3,000円、4,000円ですか。調律料金と合わせて17,000円、18,000円、20,000円にもなるわけで、その高額出費が調律をキャンセルする大きな理由にもなっているわけです。

20,000円あったら、親子4人で焼き肉がたらふく食えまっせ。GPに3こも4こも乾燥剤入っています。料金合計24,000円なり。

乾燥剤いれたいならいれてもいいけど、もっとやすくしませんか、仕入値をおもうと心が痛みますよ……。


ピアノ調律さん 談

ピアノは隙間があるので空気の出入りがあるし、ピアノの中に除湿剤を入れても、ピアノの置いてある部屋が湿気の多い環境だったらなんの解決にもならない。

部屋の環境を整える事が何より大切。

お客様に除湿剤が本当に必要かのご説明をするために、何軒かのお客様宅で実験。検証済みです。

→ 同じ温湿度計を2つ用意して、グランドピアノ屋根を閉めた状態でフレームの上(低音弦の駒のあたり)と、ピアノの外(部屋のどこか)の二カ所に起き、しばらくして確認すると、温度は季節によっては差が出るが、湿度は大差ない。


まとめ

アップライトとことなり、グランドピアノについては、乾燥剤が必要ないという意見が有力です。

多くの調律師さんが、乾燥剤ではなく除湿機などでの、きちんとした湿度管理をおすすめされています。

グランドピアノはアップライトピアノより高価ですし、演奏される方の思い入れもあると思いますし、しっかりした温度管理や湿度管理をして、末永く大切にしていきたいですね。



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